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台湾で失敗しない!内装工事・店舗設計のアフターフォローに見る日台の違いと信頼構築の秘訣

台湾で店舗出店を進める時、設計や施工のクオリティだけでなく「アフターフォロー」こそが信頼を決める重要な要素です。

日本では「完成後のケア」が当然視されますが、台湾では「完了=終了」という意識が根強く、引き渡し後の対応に文化的な違いが見られます。

台湾の内装設計・内装工事の現場で起こりやすいアフターフォローの課題と、その背景にある価値観の違いを紹介します。

さらに、日本式のきめ細かさと台湾式の柔軟さを融合した“ハイブリッド型フォロー術”を提案します。

「終わらない現場」という考え方が、台湾市場での成功と信頼のカギ。

これから台湾で店舗を設計・出店しようとする方、すでに運営中でフォロー体制を強化したい方にとって、参考となる情報満載です。

第1章 完成が“終わり”ではない──アフターフォローが信頼を決める

店舗の内装設計や施工において、「引き渡し」は一つの節目に過ぎません。

日本の業界では、むしろそこからが“本当の付き合い”の始まりだと考える人が多いでしょう。

ところが台湾では、完了報告書を提出した瞬間、すでに次の現場へと意識が切り替わることが少なくありません。

この違いは単なる習慣の差ではなく、社会構造・気候・価値観・労働環境といった多くの要素が絡み合って生まれた文化的差異です。

日本では「完成後の安心」を売り、台湾では「スピードとコスト」を売る。

どちらも正しい価値観ですが、日台の間でこのギャップを理解しないままプロジェクトを進めると、引き渡し後に信頼が崩れるリスクがあります。


日本では“引き渡し後”こそ本当の関係の始まり

日本の内装業界では、アフターフォローは「信頼の証」として最も重視されます。

施工会社の看板を背負って現場を引き渡す以上、そこから先の細やかなケアが、顧客満足度とリピート率を大きく左右するからです。

例えば、オープンから数週間後に発生したドアの建付けのズレや、照明の明るさのバランス調整、エアコンの風向変更など、細かい点でも現場監督が再訪して調整するのが一般的です。

これは、単なる修理ではなく「お店が実際に使われ始めてから気づく不具合を一緒に改善する」という伴走型サポート。

こうした姿勢が「日本の内装品質」を支える根幹であり、クライアントにとっても“施工会社の誠実さ”を測る指標になっています。

だからこそ、日本の設計会社や内装工事会社は、完成後も半年・1年といった定期点検を計画的に行う文化を維持しています。


台湾では“完了”の瞬間に仕事が終わる?

一方、台湾の店舗設計・内装工事では、引き渡しのタイミングをもって「任務完了」と捉えるケースが多く見られます。

もちろん、アフターフォローが全くないわけではありませんが、それは“要請ベース”であり、“契約に含まれていない”という前提が多いのです。

台湾の職人や設計師は、スピードとコスト効率を何より重視します。

現場が終わればすぐに次の案件へ移る。

それが彼らのリズムであり、ビジネス上の最適解でもあります。

日本のように「半年後の点検」を予定しておくよりも、「その場で素早く終わらせる」ことに価値を感じる文化です。

また、台湾では人手不足と職人単価の上昇が進んでおり、アフターフォローに時間を割く余裕がない現実もあります。

特に中小規模の工事会社では、社長自らが営業・監督・見積もりまで兼務しており、「次の仕事を取ること」が最優先。

結果として、引き渡し後の細かなフォローが後回しになる構造的要因も見逃せません。


クレーム処理と顧客対応の哲学の違い

日台の最大の違いは、「問題が発生したときの考え方」にあります。

日本では、不具合=自社の責任という意識が強く、原因が自社でなくても「お客様の安心を守るため」として動くことが多いです。

一方、台湾では、不具合が発生した場合、まず「原因の所在を明確にする」ことから始めます。

つまり、日本では「とにかく動く」、台湾では「まず確認する」。

ここにアフターフォロー文化の根本的な差があります。

台湾の現場では、クレームの処理が“感情的なやり取り”になることもありますが、それは「自分の仕事を守るため」という職人のプライドの表れでもあります。

責任の線引きを曖昧にしたまま動くと、後々トラブルに発展するため、台湾では“明文化”と“証拠”を重んじる傾向も強いのです。

このように、台湾のクレーム処理は冷たく見えても、実は職人同士の信頼や責任感の裏返しであり、単なる放任ではありません。


保証期間の考え方に見る日台のビジネス文化

日本では、内装工事における保証期間が明確に設定されています。

たとえば「1年間の無償補修保証」など、契約書に明記されるのが一般的です。

対して台湾では、保証期間の明示が曖昧なケースが多く、契約書に記載されていないことも少なくありません。

これは、台湾の施工現場が「人の信頼関係」で動く文化であることに起因しています。

保証よりも、“誰が担当だったか”が重要なのです。

つまり「あの監督に頼めば何とかしてくれる」という人的信用のネットワークが保証の代わりになっています。

この文化は日本人には理解しづらい部分でもありますが、台湾ではこの“人脈ベースの信頼”がビジネスの潤滑油。

保証書よりもLINEのつながりが価値を持つ社会では、「書類」より「人間関係」がアフターサービスを支えています。


日台どちらが優れているのかではなく「価値観の差」を理解する

アフターフォローの姿勢を比べると、日本の丁寧さと台湾の即応性、どちらも異なる魅力を持っています。

日本の強みは体系化された管理と安心感。

台湾の強みはフットワークの軽さと柔軟な判断力。

問題は、「どちらが正しいか」ではなく、「どちらを理解して行動するか」です。

日本の常識を台湾にそのまま当てはめても、現場は動きません。

逆に台湾流に任せすぎると、品質面で不安が残ることもあります。

大切なのは、両国の文化を知り、適切な期待値を設定することです。

日本企業が台湾で店舗設計・内装工事を依頼する際には、アフターフォローに関する考え方を初期段階で共有し、「どこまで対応するか」「どの期間を保証とするか」を明文化しておくことが、信頼関係を長く保つ鍵になります。


第2章 台湾の現場に見る「フォロー文化」の実態

日本の設計・施工業界では、工事が完了しても担当者が定期的に店舗を訪れ、設備や仕上げの状態を確認することが当然とされています。

しかし台湾の現場では、「フォロー=再訪」という考え方が根付いているわけではありません。

台湾の内装工事会社や室内設計会社の多くは、工事完了と同時に次の現場へと動き出します。

これは決して無責任なのではなく、台湾社会における“効率優先”と“人間関係依存”という二つの文化が交錯しているからです。


台湾では「保証書より関係性」が優先される?

台湾では、書面で定義された保証よりも「誰が責任を持つのか」という“人のつながり”が重視されます。

これは、内装工事の多くが中小企業や職人ネットワークによって支えられているからです。

日本のように「会社単位」での信頼が成立するのではなく、「あの監督」「あの職人」「あのデザイナー」といった“個人単位”で信頼が構築されていきます。

したがって、トラブルが発生した場合でも、「保証書を確認する」より先に、「誰に連絡するか」を考えるのが台湾流。

たとえ正式な保証期間が過ぎていても、担当者が誠実であれば「面子を保つため」に無償で修理してくれることも多いのです。

このように、台湾では契約よりも関係性が優先される社会的構造が存在し、それがアフターフォローの形を大きく左右しています。

信頼が築けていれば、書類がなくても動いてくれる──

それが台湾の人情ビジネスの本質です。


現場監督がいない台湾での不具合対応とは

日本の店舗内装工事では、必ず「現場監督」という立場の人がいます。

工期や品質を管理し、完成後の問い合わせにも窓口として対応する。

しかし台湾では、「現場監督」という職能が確立していないケースが少なくありません。

台湾の現場は、設計士・職人・施主が直接やり取りをする“分業的なチーム制”で動いています。

つまり、工事が終わったあとに不具合が出ても、「誰に伝えるか」が曖昧になるのです。

また、工事後に連絡を取ると、「その部分は別の工班(こうはん:工事グループ)が担当だった」と返されることも多く、結局、施主自身が複数の職人に連絡して調整しなければならない場合もあります。

日本の感覚では不便に思えますが、台湾ではこれが一般的なスタイル。

全員がフリーランス的に動いているため、プロジェクトが終わればチームも解散する。

したがって、アフターフォローを依頼するには“人脈を頼る”ことが最も確実な方法なのです。


アフターサービスの窓口が曖昧になりやすい理由

台湾でアフターフォローが難しいもう一つの理由は、業務範囲の線引きが日本よりも曖昧であることです。

日本では「設計」「施工」「監理」が明確に分かれており、それぞれ責任の所在が契約上定義されています。

ところが台湾では、一つの会社が「設計兼施工」を行い、さらに「デザイン監理」も担うことが多いのです。

このため、引き渡し後に不具合が生じても、「設計の問題か、施工の問題か」が判別しにくくなります。

結果として、誰が対応すべきか不明瞭なまま時間だけが過ぎてしまう──

そんなケースも少なくありません。

また、台湾では「責任を認める=損失を被る」という意識が強く、トラブルが起きると、まずは“原因究明より自己防衛”が優先されがちです。

この文化が、フォロー体制を形式的なものにとどめてしまう要因の一つでもあります。


台湾の職人ネットワークと「頼まれたら動く」文化

とはいえ、台湾の職人たちは決して冷たいわけではありません。

むしろ、彼らは人情に厚く、「困っている人を放っておけない」という意識を強く持っています。

工事後にオーナーが「ちょっと扉が重くなったんだけど」と連絡をすれば、日程の合間を見て駆けつけてくれる職人も多いのです。

この“頼まれたら動く”文化は、契約ではなく「信頼」でつながる社会ならではの仕組みです。

特に台湾では、食事や差し入れを通じて人間関係を築くことがとても重要視されます。

一度信頼関係ができると、「あの客はいい人だから優先してやろう」という情的判断が働き、結果的にアフターフォローのスピードも上がります。

つまり、台湾で良好なフォロー体制を築くには、“お金より関係”という視点が欠かせません。


現場で信頼される“人ベースのフォロー体制”の仕組み

台湾でアフターフォローをスムーズに行うためには、会社という枠を超えて「担当者ベースの信頼」を構築することが鍵です。

現場で最も信頼を得ているのは、“誠実に話を聞き、すぐに動く人”。

つまり、完璧なシステムよりも、「この人に連絡すれば何とかなる」という安心感が重要なのです。

多くの台湾人オーナーは、初回の仕事が終わった後も、その担当者と個人的に連絡を取り続けます。

LINEで近況を共有し、時には新しい案件を紹介してもらうこともあります。

この「人ベースのネットワーク」こそ、台湾のアフターフォロー文化の根幹です。

日本企業がこの環境で成功するためには、単に契約や報告書を整備するのではなく、“担当者が長く付き合える関係”を築くことが求められます。

誠実な対応と、少しの柔軟さ。

それが台湾で信頼を積み上げる最短ルートなのです。


第3章 日本企業が戸惑う「台湾式フォロー」──その誤解と本質

台湾で店舗を出店した日本企業の多くが最初に感じる違和感は、

  • 「連絡してもすぐ返事が来ない」
  • 「誰も責任を取らない」
  • 「完成後に何か起きても動きが遅い」

という点です。

しかし、これを単純に「台湾の施工会社は対応が悪い」と判断してしまうのは危険です。

実はその背後には、台湾の社会構造・言語感覚・仕事観が深く関係しており、“台湾式アフターフォロー”には彼らなりの合理性と文化的ロジックが存在します。


「すぐ対応します」が“今すぐ”を意味しない理由

台湾で打ち合わせをしていると、担当者がよく「我馬上去!(すぐ行きます)」や「等一下(少し待って)」という言葉を使います。

日本人からすれば、“今すぐ来る”という意味に聞こえますが、実際には「近いうちに」「都合がついたら」という柔らかいニュアンスを含みます。

台湾語や中国語の表現は、曖昧さを残すことで人間関係の摩擦を避ける文化的特徴があります。

したがって、彼らが「すぐ」と言っても、それは“心の準備ができ次第”という意味合いであり、必ずしも時間的即応を示すわけではありません。

この違いを知らないまま日本式の「即対応」を求めると、「催促がきつい」「信頼されていない」と受け取られることもあります。

台湾では“柔らかい表現”こそが礼儀。

日本の「迅速・正確」とは別の形で「誠意」を示しているのです。

だからこそ、台湾の現場で「対応が遅い」と感じたときこそ、相手の文化的背景を思い出す必要があります。


メッセージ文化と電話文化──連絡手段のすれ違い

日本の現場監督や設計士は、電話で即座に連絡を取り、リアルタイムで状況を確認することを好みます。

しかし台湾では、LINEやメッセンジャー、WeChatといったチャットアプリが主な連絡手段です。

特に台湾人は「証拠を残す」ことを重視する傾向が強く、電話よりもテキストメッセージのやり取りを好むのです。

これは、言った言わないのトラブルを避けるためであり、決して非協力的だからではありません。

ただし、文字の文化には“温度”がありません。

日本人が期待するような「安心感」や「臨場感」は、メッセージ上では伝わりにくく、結果として“冷たい対応”と受け取られてしまうこともあります。

一方で、台湾側は「既読=理解」と捉えているため、返信が遅れても問題ないと考える傾向があります。

日本のように即レスを期待する文化とは違うため、誤解が生じやすいのです。

このギャップを埋めるには、「電話をかける前に一言メッセージ」「返信を急かさず期限を明記」といった工夫が効果的です。

文化の違いを尊重しながら、連絡の“温度”を調整することが信頼構築の第一歩となります。


台湾では“問題解決”より“問題共有”を重んじる?

日本の施工現場では、「問題が起きたらすぐに対策を打ち、報告書を提出する」のが一般的です。

しかし台湾では、「まず共有し、みんなでどうするかを話し合う」プロセスを大切にします。

つまり、日本のように“即断即決”よりも、“共感と合意”を優先する文化なのです。

たとえば、店舗の壁紙が施工後に膨らんだ場合、日本では「湿度管理のミスです。すぐに張り替えます」と報告が入るでしょう。

しかし台湾では、「最近天気が湿っぽくて、ちょっと壁紙の調子が悪いね。どうしようか?」という会話から始まることが多いのです。

この“共有文化”は、一見スピード感が欠けているように見えますが、実は「トラブルを共同で解決する関係性」を重んじる台湾人の人間関係の表れです。

彼らは「一緒に考えてくれた」と感じる相手を信頼します。

したがって、クレームを出す際にも“怒る”より“相談する”姿勢をとる方が、台湾では効果的に動いてくれることが多いのです。


「誰が責任者か分からない」構造の背景

日本の現場では、現場監督・設計士・工事会社の責任分担が明確です。

しかし台湾では、プロジェクトごとに関係者が流動的に変わるため、「誰が最終責任者なのか」が曖昧になりがちです。

内装工事会社が複数の職人チームを下請けとして使うのが一般的で、現場監督が常駐するケースは少ないため、クライアントから見ると「誰に話せば解決するのか」が分かりづらい構造になっています。

また、台湾では「担当者が辞める」「別案件に移る」といった人の入れ替わりも多く、プロジェクトの途中で窓口が変わることも珍しくありません。

そのため、日本のように“企業としての一貫対応”を期待すると、戸惑いを感じることになります。

この構造的な問題を補うには、契約書に「アフター対応窓口」「保証範囲」「担当変更時の引き継ぎ義務」を明記しておくことが効果的です。

台湾側も契約に記載された事項は尊重する傾向があるため、最初に“線を引く”ことでトラブルを回避できます。


日本企業が誤解しがちな“台湾流の誠意”とは

日本では、誠意とは「すぐに動くこと」「約束通りに実行すること」です。

ところが台湾では、誠意は「相手の立場を理解しようとすること」「関係を切らさないこと」にあります。

つまり、“スピード”より“関係の持続”こそが誠意の証とされるのです。

たとえば、修繕対応が数日遅れても、現場監督が「心配して連絡をくれる」「次に会った時に丁寧に謝る」といった行動を見せれば、台湾のクライアントはむしろ安心します。

彼らにとっては、“形式より心の通い合い”が何より重要なのです。

日本人の「約束の時間を守る」文化と、台湾人の「相手の気持ちを尊重する」文化は、どちらも誠実さの形。

ただ方向性が違うだけです。

日本企業がこの“台湾流の誠意”を理解できるようになると、多少の遅延やミスがあっても信頼はむしろ強まっていきます。

相手を責めるより、“一緒に乗り越える姿勢”を示すことが、台湾では最高のアフターフォローになるのです。


第4章 信頼をつなぐアフターフォロー術──日台ハイブリッド型対応

日本のアフターフォローは「仕組み」で動き、台湾のアフターフォローは「人」で動く。

この対比こそが、両国の文化の本質をよく表しています。

日本の施工会社や設計事務所が台湾で成功するためには、この二つの強みを融合させた“ハイブリッド型のアフターフォロー体制”を築くことが欠かせません。

つまり、日本式の「管理と記録」を基盤としつつ、台湾式の「柔軟で温かい対応力」を現場で活かす。

このバランスを取ることが、台湾で信頼を積み上げる最大の鍵となります。


日本式の“記録と管理”+台湾式の“即応と柔軟さ”

日本の内装工事現場では、引き渡し後の点検や修繕履歴がすべて記録として残されます。

誰がいつどの部分を修理したのか、どんな素材を使用したのか、細かく管理することで品質の一貫性を保っています。

一方、台湾の現場では「記録」よりも「対応の早さ」が評価されます。

職人や担当者が現場で判断し、その場で修繕してしまうことも珍しくありません。

この両者の良さを組み合わせるには、「対応後に必ず報告を残す」というルールを導入するのが効果的です。

たとえば、台湾の現場監督や職人が修繕対応をしたら、スマートフォンで写真を撮ってLINEグループに共有する。

それを日本側が記録管理する──

これだけで両国の文化が自然に調和します。

台湾人は“管理される”ことには抵抗がありますが、“共有する”ことには前向きです。

したがって、管理を「共有」に変えるだけで、アフターフォローの透明性とスピードが格段に上がるのです。


アフター窓口を明確にするだけで信頼は変わる

台湾の現場で起きがちなトラブルの一つに、「誰に連絡すればいいか分からない」という問題があります。

設計会社、施工会社、職人、オーナー、大家──

関係者が多いほど責任の所在がぼやけます。

この問題を防ぐ最も簡単な方法は、「アフター窓口担当」を明確に決めておくことです。

日本企業が台湾でプロジェクトを進める場合、現地の協力会社の中から信頼できる担当者を一人選び、その人を“フォローアップマネージャー”として位置づけると良いでしょう。

台湾のクライアントは、「誰が自分の面倒を見てくれるか」を重視します。

顔の見える関係があるだけで、安心感が全く違うのです。

たとえ組織的な対応が整っていなくても、台湾側にとって、日本側の“あなたの担当は私です”という窓口がわかるだけで、相手の信頼度は一気に増します。

台湾では会社対会社よりも個人対個人の「一対一の信頼」が最も強い保証。

窓口担当者を明確にすることは、単なる効率化ではなく、“誠意の見える化”なのです。


定期訪問よりも「軽いチェック連絡」が効く

日本では、半年点検や一年点検といった定期訪問をスケジュール化することが一般的です。

しかし台湾では、こうした「定期点検」は必ずしも効果的ではありません。

台湾のオーナーや店長は、忙しく働く中で「訪問のために時間を取ること」を好まない傾向があります。

その代わりに効果的なのが、“軽いチェック連絡”です。

たとえば、オープン後1ヶ月や季節の変わり目に「最近、店内の空調や照明は問題ありませんか?」とLINEで一言メッセージを送るだけで、信頼感が格段に深まります。

台湾では、このような“気にかけてくれている”という感覚が非常に大切にされます。

形式的な点検よりも、心配して声をかける方が、関係維持には効果的なのです。

日本式の「定期的で形式的な関わり」と、台湾式の「柔軟な声かけ」をうまく組み合わせることで、アフターフォローが形式ではなく“関係”として機能し始めます。


台湾のLINE文化を活かした“ゆるいフォロー”の強み

台湾のビジネス現場では、LINEグループがほぼ標準のコミュニケーションツールです。

設計・施工・施主が同じグループに入って、進捗を共有するケースも多くあります。

アフターフォローでも、この“ゆるいグループ感覚”を活かすことが重要です。

たとえば、工事完了後もグループをそのまま残しておき、日常的に軽いメッセージを交わすことで、問題発生時のハードルを下げることができます。

「こんな小さなことを相談していいのか」という心理的障壁がなくなり、早期発見・早期対応につながります。

また、LINEの中で写真・動画・ボイスメッセージを共有できるため、言葉の壁を越えたコミュニケーションも可能です。

日本側がこの文化を理解し、形式的な報告書よりも“カジュアルな共有”を受け入れることで、台湾側のモチベーションと信頼は飛躍的に高まります。


不具合対応を「営業チャンス」に変える発想

アフターフォローを「コスト」ではなく「営業活動の一部」として考えることができれば、現場の動き方が一変します。

台湾では、修繕対応をきっかけに次の案件へつながることが非常に多いのです。

たとえば、既存店舗のドア修理を依頼された際に、「実は隣の空きテナントも借りようと思っていて」と新しい相談を受ける──

そんな展開が珍しくありません。

このように、アフターフォローは台湾では「再接触のチャンス」として機能しています。

そのため、日本企業も“フォロー担当”を単なるメンテナンス係にせず、“顧客関係の継続担当”として位置づけると良いでしょう。

「修理に来てくれる会社」は多いですが、「気にかけてくれる会社」は少ない。

台湾ではこの“気にかける姿勢”こそが最大の営業力になるのです。


第5章 未来を見据えたアフター戦略──関係継続がブランドをつくる

アフターフォローは、単なる「不具合対応」ではありません。

むしろそれは、顧客との関係を持続させ、ブランド価値を高め、次のプロジェクトへとつなげる“資産形成のプロセス”です。

特に台湾のように「信頼=紹介」によって新規案件が広がる市場では、フォロー対応の在り方そのものが企業の評価を左右します。


フォローが「次の紹介」を生む台湾の人脈構造

台湾の内装業界は、紹介と口コミが極めて強い影響力を持っています。

日本では広告や実績資料によって受注を得るケースが多いのに対し、台湾では「知り合いの紹介で」「友人の店舗を見て」という経路が主流です。

つまり、一度信頼を得た顧客が“次の顧客”を連れてきてくれるのです。

そのため、アフターフォローをおろそかにすると、単に一つの案件を失うだけでなく、“紹介の連鎖”が止まってしまうというリスクがあります。

逆に、修繕対応やメンテナンス時に丁寧なコミュニケーションを行えば、その評判が人から人へ伝わり、思わぬ大口案件へとつながることもあります。

台湾のビジネス社会では、「フォローできる会社=信頼できる会社」。

だからこそ、引き渡し後も積極的に連絡を取り合い、関係を“維持する努力”が不可欠なのです。


アフター対応を“プロモーション”として位置づける

内装業界にとって、台湾では、アフター対応こそが最も効果的なマーケティング活動です。

なぜなら、現場での再訪は「既存顧客に自社を再認識してもらう機会」であり、その姿を見た他の関係者(オーナーの友人、大家、不動産仲介業者など)が次の依頼先を決めるきっかけになるからです。

つまり、修繕対応のたびに“新しい現場広告”を出しているようなものです。

ですから、何かトラブルがあって相談した時に、すぐにアフター対応をしてもらえるということは、その業者にとっても、今後も繋がっていたいお客様だということです。

お互いに信頼を高めることができる関係になった証です。


台湾人スタッフを巻き込んだローカルフォロー戦略

台湾市場で成功する日本企業の多くは、「現地スタッフによるフォロー体制」を構築しています。

日本人担当者がどれだけ丁寧でも、言語や文化の壁はやはり存在します。

そこで、日本語と日本文化のわかる台湾人スタッフが現地スタッフとの間に入り、柔らかくフォローすることで信頼の質が大きく変わるのです。

例えば、台湾では「一緒に食事をする」「贈り物を渡す」といった社交が関係維持の鍵になります。

日本人が直接行うと誤解を招く可能性もありますが、現地スタッフであれば自然な範囲で行えます。

重要なのは、「ローカルチームを信頼して任せること」。

日本的な“完璧主義”を押し付けず、現地の温度感を活かしたフォローに委ねることで、台湾特有の“人情経営”に寄り添うブランドとして評価されていきます。


デジタルツールを使った長期関係の維持法

アフターフォローは、現場訪問や電話対応だけではありません。

デジタルツールを活用すれば、効率的かつ継続的に顧客との関係を維持できます。

たとえば、Googleフォームを使った「年1回の簡易アンケート」、LINE公式アカウントでの「メンテナンス情報配信」、あるいはメールでの「季節のご挨拶」など、小さな接点を積み重ねるだけでブランド印象は大きく変わります。

台湾のオーナーは、頻繁な連絡よりも“忘れられていない”という感覚を重視します。

そのため、日本の本部から「久しぶりにご連絡します。工事の後、店舗の状態はいかがでしょうか?」という一言でも十分な効果があります。

さらに、施工履歴や修繕履歴をクラウド上に共有しておけば、スタッフが変わってもフォローの質を一定に保つことができます。

こうした“デジタル×人間的対応”の組み合わせこそが、これからの台湾市場で信頼を持続させる鍵となります。


“終わらない現場”という発想がブランドを強くする

本来、店舗設計や内装工事は“完成”がゴールではありません。

むしろそこからがスタートです。

お客様の店舗が運営される限り、現場は生き続けています。

この「終わらない現場」という発想を持つことが、アフターフォローの真価を発揮させるポイントです。

たとえば、開店から半年後に、台湾の店舗から「客導線を改善したい」という相談を受けたら、それは設計上の不具合対応ではなく“進化対応”です。

こうした改良提案を積極的に行うことで、単なる施工会社から「成長を支えるパートナー」へと立場が変わります。

日本企業が台湾で長く信頼されるためには、「終わった案件」として切り離すのではなく、「続いていく関係」として顧客を見つめる視点が欠かせません。

この“終わらない現場”の哲学こそが、ブランド価値を強く、そして永続的に育てていくのです。


まとめ

「アフターフォローは信頼の証──“終わらない現場”が日台をつなぐ」

台湾で店舗をつくるということは、図面を描き、工事を終え、引き渡すことだけではありません。

むしろ、引き渡しのあとこそが本当のスタートラインです。

日本では「完成後のフォロー」が信頼の証として重視され、台湾では「人と人との関係」が最大の保証になります。

両者のアプローチは異なりますが、どちらも根底にあるのは「お客様に喜んでもらいたい」という同じ思いです。

だからこそ、日本企業が台湾に進出する際には、形式的な管理だけでなく、“人情に寄り添う”フォローの姿勢を持つことが不可欠なのです。


日本式の管理 × 台湾式の温度

日本の内装設計・内装工事では、工程・保証・記録といった“仕組み”が整備されています。

その一方で、台湾では“柔軟な対応力”と“人間関係の継続”が最も重んじられます。

両者の違いは、どちらが優れているという話ではなく、「何を信頼の軸にしているか」の違いです。

最も理想的なのは、日本の仕組みの精度と台湾の関係の温度を融合させること。

たとえば、台湾ではLINEでの気軽な報告が信頼の源になります。

それを日本側でしっかりと記録・管理すれば、両国の文化は矛盾せず共存できます。


台湾では「アフター対応=次のチャンス」

台湾の施工現場では、アフターフォローが“次の紹介”を生む重要な機会です。

一度信頼を得た顧客が、友人や取引先を紹介してくれる──

これが台湾の人脈経済の根幹です。

だからこそ、たとえ小さなトラブルであっても、誠実に向き合えば「この会社は信頼できる」という評判が生まれます。

その評判が、人を介して広がっていくのが台湾の強みであり、日台のビジネスを成長させる最大の推進力です。


現場は終わらない──“持続する関係”こそブランド

設計も工事も、引き渡しで終わりではありません。

むしろ、そこから始まる「関係の持続」こそがブランドづくりの本質です。

アフターフォローを通じて顧客の信頼を積み上げる企業こそ、長く選ばれ続けます。

台湾では、「終わった現場」はすぐに忘れられてしまいます。

しかし、「終わらない現場」を持つ会社、つまり、いつでも相談できる会社は業界の中で特別な存在になります。

“終わらない現場”という発想を持つことが、日台両方でブランドを強くし、永続的なパートナーシップを築く最良の方法です。


文化を超えた信頼づくりへ

日本企業が台湾で信頼を得るために必要なのは、文化を変えることではなく、文化を理解することです。

台湾の職人や設計会社の考え方を尊重しながら、日本らしい誠実さと品質管理を組み合わせる──。

この柔軟で人間的な姿勢こそ、真の意味での「国際的な施工品質」と言えるでしょう。

台湾の現場では、“書類”よりも“顔”が、“規定”よりも“信頼”が、“速度”よりも“気配り”が重んじられます。

その価値観を理解し、誠実に向き合う日本企業こそが、これからの台湾市場で確実に成果を上げていくのです。


アフターフォローとは、技術ではなく信頼の表現です。

完成後も現場の心に寄り添い続けることが、次の出店、次の設計、次の信頼へとつながっていきます。

台湾の店舗設計・内装工事の世界で成功するためには、「終わった仕事」を“つながる関係”に変える勇気が必要です。

その関係の積み重ねこそが日本と台湾の未来をつなぐ、最も確かなデザインなのです。


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