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台湾の内装設計を最大限に活かす日本の施工の力|日台協業が生む新しい店舗づくりの未来

台湾での店舗出店を検討する日本企業にとって、「台湾の設計会社に頼んで日本の施工品質を再現できるのか?」という疑問は避けて通れません。

文化も言葉も、現場の“呼吸”も違う――

それでも、日台協業は決して夢物語ではありません。

むしろ、台湾の柔軟な設計発想と日本の緻密な施工管理が融合するとき、これまでにない空間価値が生まれます。

第1章 台湾と日本、異なる設計と施工の“呼吸”を知る

店舗づくりにおいて、「設計」と「施工」が同じ国の文化・習慣の中で行われているときには、言葉にしなくても通じる“呼吸”があります。

しかし、台湾と日本のように文化や職人意識が異なる国どうしでは、この“呼吸”が合わないことで、思わぬ誤解や品質のズレが生まれます。

台湾の設計会社と日本の施工会社が手を組んだ場合、最初にぶつかるのは技術の問題よりも「考え方の違い」です。

日本人が大切にする“段取り”と、台湾人が重視する“柔軟性”が、どのようにかみ合うかが勝負になります。


日本は“図面主導”、台湾は“現場主導”:基本構造の違い

日本の店舗づくりは、まず図面ありきです。

詳細な図面があって初めて、施工が始まります。

図面は「約束」であり、「契約」であり、すべての判断の基準となります。

一方、台湾では、図面は“ガイドライン”程度に考えられることが多く、現場の判断で柔軟に変更することが当たり前の文化があります。

特に電気・空調・木工などの職人は、「現場を見て判断する」ことに誇りを持っています。

つまり、日本では「設計が王」、台湾では「現場が主役」なのです。

この違いを理解していないと、日本側は「図面と違う」と怒り、台湾側は「何が問題なの?」と首をかしげる──

そんな典型的なすれ違いが起こります。


設計図の精度と柔軟性──どこまで描くかの文化差

日本の設計図は、細部まで緻密に描かれます。

コンセントの高さ、巾木の厚み、照明器具の型番まで正確に明記されているのが通常です。

これは、日本社会が「正確さ」と「再現性」を重視する文化だからです。

一方、台湾の設計図は「コンセプトを伝えるもの」として扱われることが多く、現場で微調整される前提で描かれています。

図面よりも完成後の“雰囲気”や“空気感”を重視する傾向が強く、「絵としての図面」という表現がしっくりきます。

この違いを知らずに日本側が「図面どおりにやってください」と要求すると、台湾側は「なぜそこまで拘るの?」と理解できないのです。

つまり、日本の図面文化は「精密」、台湾の図面文化は「感覚的」。

どちらが良い悪いではなく、この前提を共有することで初めて建設的な会話が成り立ちます。


台湾の現場は「早さ」が命、日本の現場は「完成度」が命

台湾の施工現場では、スピードが評価の指標です。

特に商業施設ではオープン日が決まっていることが多く、多少の仕上がりよりも「納期厳守」が最優先されます。

そのため、「多少のズレは問題なし」という文化が浸透しています。

対して日本の現場は、工程を守ることよりも「仕上がりの美しさ」を重視します。

1mm単位の誤差にこだわり、仕上がりの美観や精度に徹底的に注意を払います。

日本の現場監督は「予定通りより、完璧に」が口癖であり、台湾の監督は「完璧より、間に合わせる」が常識なのです。

この価値観の違いを理解せずに日本側が“日本基準”を押し付けると、台湾の職人は反発します。

逆に台湾式のスピード感を尊重しつつ重要箇所のみ日本基準で確認する、いわば“ハイブリッド管理”こそが現実的な解決策です。


設計変更のスピード感と決裁ルートの違い

日本では設計変更を行う場合、必ず設計者・施主・監督の三者確認を経てから正式に図面が修正されます。

そのために変更するのには時間がかかりますが、その分ミスは少なく責任の所在も明確です。

一方、台湾では現場判断で変更が進むことが多く、監督や職人がその場で決断して施工してしまうケースも珍しくありません。

もちろんスピードは上がりますが、後で「聞いていない」「契約と違う」と揉めるリスクもあります。

日本人の感覚では「変更には承認が必要」と考えますが、台湾では「臨機応変にやるのがプロ」。

したがって、最初の段階で「どこまで現場判断で変更して良いか」を明確に線引きしておくことがトラブル防止の鍵になります。


「仕様書」より「人の信頼関係」が鍵になる台湾文化

日本の工事現場では、仕様書や契約書にすべてが書かれており、それに基づいて動くのが基本です。

しかし台湾では、「人の信頼関係」がすべての根底にあります。

職人も監督も、「あの人のためなら頑張る」という“人情のスイッチ”が強く働きます。

逆に、信頼を失うと図面も契約も意味を失いかねません。

つまり、日本では「文書で守る」、台湾では「信頼で守る」。

この文化的背景を理解したうえで、まずは設計者・監督・職人との“信頼づくり”を優先することが、日台協業成功の第一歩です。

日本式の「ルール遵守」を基本にしつつ、台湾式の「人との調和」を意識する──

そのバランス感覚が、両国の現場をつなぐ架け橋になります。


第2章 “台湾設計×日本施工”の成功事例と失敗例から学ぶ

理論よりも実際に起こった「現場のリアル」ほど説得力を持つものはありません。

日本企業が台湾で店舗出店を行う際、台湾の設計会社と日本の施工会社が協業するケースは近年確実に増えています。

その背景には、台湾の設計力の向上と日本の施工品質への信頼があります。

しかしその一方で、「思っていた完成度にならなかった」「コストが膨らんだ」「工期が間に合わなかった」というトラブルも少なくありません。

成功事例と失敗事例の両方を冷静に分析することで、見えてくるものがあります。


成功例①:日本ブランドの美意識を活かした台北の高級サロン

ある日本の美容ブランドが台北に開業したサロンでは、台湾のデザイン会社がインテリアを担当し、日本の施工チームが仕上げを監修しました。

このプロジェクトが成功した最大の理由は、双方が「日本的美意識」を正しく理解していたことです。

台湾側デザイナーは、和の素材感をそのまま持ち込むのではなく、“空気の余白”を表現することに注力しました。

一方、日本側の施工チームは素材調達や仕上げ精度の面で妥協せず、日本式の丁寧な納まりを現場で指導しました。

結果、台湾人顧客にも好評な“静かな上質さ”を体現した空間が誕生しました。

成功の鍵は、台湾側が日本ブランドの「価値観」を正しく翻訳し、日本側が台湾の「環境条件」に合わせて施工精度を調整した点にあります。


成功例②:ローカル感を尊重した台湾設計×日本施工の融合空間

別の例では、台湾人オーナーが主導し、日本ブランドが共同で展開したカフェチェーンがあります。

台湾の設計会社がローカルの素材や職人技を積極的に取り入れ、日本の施工会社がそれを“見せ方”で支えました。

特に照明計画では、日本側が「光の方向と質」をコントロールし、台湾側は空間全体の“温度”を調整。

結果、台湾らしい温もりを保ちながら、日本ブランドの繊細な世界観を表現することに成功しました。

このプロジェクトでは、日本側が“完璧な再現”を求めなかったことが功を奏しました。

台湾の施工現場には独自のリズムがあり、それを理解したうえで「この違いこそ個性」と受け入れたことで結果的にブランド価値を高める空間に仕上がったのです。


失敗例①:設計意図の誤訳による寸法トラブル

一方で、失敗例も見逃せません。

ある日本企業の旗艦店プロジェクトでは、台湾の設計事務所が図面を担当し、日本の施工会社が現場に入ったところ、什器寸法が20mmずれていたことが判明しました。

原因は、単位の誤訳です。

台湾では図面寸法をセンチメートル表記、日本ではミリメートル表記で扱うケースが多く、変換ミスが発生しました。

このような初歩的なミスも、言語と単位の壁がある現場では珍しくありません。

日本側は「図面通りにやった」と主張し、台湾側は「修正すればいいじゃないか」と軽く捉える。

この感覚のズレが、関係悪化を招きました。

根本原因は、「図面チェックの責任分担」を曖昧にしたまま着工してしまったこと。

設計図が共通言語でなければ、協業は成立しないのです。


失敗例②:日本側の過剰管理が招いた台湾職人との摩擦

また、別のケースでは、日本の施工管理者が台湾職人の作業に逐一口を出した結果、チームの士気が下がってしまいました。

台湾の職人たちは、長年の勘と経験を大切にする文化があります。

日本式の「確認・報告・承認」プロセスを重視しすぎると、彼らには「信頼されていない」と感じられてしまうのです。

この現場では最終的に仕上がりは良好でしたが、職人が途中で離脱し、代替人員を探すなど、余分なコストが発生しました。

“日本品質”を保とうとする姿勢は正しいですが、それを押し付ける形になると現場の空気が崩壊します。

協業の本質は「支配」ではなく「共創」。

日本側は“見守るリーダー”の立場を意識することが重要です。


失敗を防ぐ「共通言語」── 設計図以上に大切な打ち合わせ力

成功・失敗の差を分ける最大の要素は、「共通言語」です。

ここで言う“言語”とは、中国語や日本語だけではなく「現場で何をもってOKとするか」という共通認識のことです。

たとえば、「このくらいの隙間ならOK」と「それはNG」の線引き。

これを最初に共有していないと、どんなに優れた施工チームでも噛み合いません。

打ち合わせでは、単に図面を読むのではなく、互いの“感覚”をすり合わせることが重要です。

日本人にとって当たり前の「仕上がり確認」も、台湾人にとっては「現場判断で済むこと」かもしれません。

つまり、“図面”よりも“対話”。

現場に立つ全員が「同じゴールイメージ」を持つことで、日台協業は初めてうまく回り出します。


第3章 台湾で日本品質を再現するための5つの工夫

「台湾の職人技で、日本品質の仕上がりは可能ですか?」

この質問を、日本企業の担当者からよく聞きます。

答えは「できます」。

ただし、やり方を間違えなければ、の話です。

台湾は高温多湿で、使用される建材や設備機器も日本とは異なります。

また、職人の分業体制や作業テンポも違うため、日本と同じ方法をそのまま持ち込んでも再現性は低くなります。


材料調達のポイント:日本仕様を無理に求めない賢さ

多くの日本企業が最初にぶつかる壁は「材料調達」です。

日本で標準的に使われている建材や設備は、台湾では入手できないことが珍しくありません。

輸入すれば品質は保てますが、輸送コスト・納期・関税の問題が発生します。

ここで重要なのは、「すべてを日本仕様にしようとしない」ことです。

たとえば、壁材や塗料などは現地メーカーにも高品質な製品が多く、むしろ台湾の気候に適しています。

湿度の高い地域では、日本製よりも台湾製の素材のほうが長持ちするケースもあります。

つまり、“日本品質”とは“日本製品を使うこと”ではありません。

“目的に適した品質を確保すること”こそが、本当の意味での日本品質なのです。


職人の“得意分野”を見抜く:台湾木工と日本木工の違い

台湾の職人は器用で、応用力があります。

しかし、得意分野には明確な特徴があります。

たとえば、台湾の木工職人は家具製作や装飾造作に強く、手作業での造形に優れています。

一方で、日本のようにミリ単位の精度で建具を納めることには不慣れなことが多いです。

この違いを理解していれば、「細部は日本側が管理」「全体造作は台湾側に任せる」といった分担が可能になります。

また、台湾では職人が現場判断でデザインを微調整することが多いため、その自由度を逆に活かして「意匠性の高い仕上げ」を依頼するのも一つの手です。

大切なのは、“苦手な部分を指摘する”のではなく、“得意な部分を伸ばす”。

これが台湾現場を動かす最も賢いアプローチです。


日本側監督の関与ポイント:口を出すよりも「手順を共有」

日本の監督はつい「細かく指示を出す」傾向があります。

しかし台湾現場では、それが逆効果になることもあります。

台湾の職人はプライドが高く、「自分で判断する自由」を重んじます。

そのため、逐一指示を出すと反発を招きやすいのです。

そこで有効なのが、「指示」ではなく「手順の共有」です。

たとえば、「Aの前にBをやると、仕上がりがきれいになります」と“理由つき”で伝える。

すると職人は納得し、自分のやり方に組み込みます。

この“納得感”があるかどうかで、現場の空気はまったく変わります。

日本側監督の役割は、命令ではなくナビゲート。

現場全体が同じゴールを描けるように「道筋を見せる」ことが、日本品質を保つ最短ルートです。


工程管理は“余裕3日”が鉄則:台湾の天候・交通事情を考慮せよ

台湾で日本式の工程管理をそのまま適用すると、ほぼ確実に破綻します。

その理由は、気候と流通です。

台風・スコール・湿度変化により、塗装や床仕上げなどが予定どおりに進まないことが頻繁にあります。

さらに、資材の搬入が渋滞で遅れることも珍しくありません。

そのため、工程表を作成する際は、日本基準よりも最低3日は“余裕”を持たせておくことをおすすめします。

この余白があることで、トラブル時にも冷静に対応でき、結果として工期遅延を防ぐことにつながります。

台湾では“完璧なスケジュール”より、“柔軟に動けるスケジュール”のほうが成功率が高い。

これを理解している監督は、どんな現場でも信頼を得ています。


品質を決めるのは“図面”ではなく“関係性”

最終的に品質を左右するのは、仕様書でも図面でもありません。

人と人との関係性です。

台湾の現場では、職人たちは「誰のためにやるか」を重視します。

信頼関係があると、指示がなくても丁寧に仕上げてくれます。

逆に、関係が冷え切っていると、図面どおりに仕上げても“心のこもらない仕事”になってしまいます。

このため、日本側監督は“品質管理者”であると同時に、“信頼構築者”でもあるべきです。

朝の挨拶、現場でのねぎらい、コーヒーを差し入れる──そんな小さな行動が、実は最も効果的な品質管理なのです。

台湾で日本品質を実現するために最も必要なのは、“技術”ではなく“人間力”。

これを忘れなければ、どんな現場でも必ず成果は出せます。


第4章 日台協業の進め方 ── プロジェクト成功のための実践ステップ

日台協業プロジェクトで最も重要なのは、「最初の3週間」と「最後の3日間」です。

スタートの段階で方向性を誤ると、その後の工程はすべてズレたまま進行します。

そして最後の数日で信頼を崩すと、どんなに美しい空間を作っても“後味の悪い仕事”になります。

日本の設計思想と台湾の現場文化をつなぐには、プロジェクト全体を「翻訳」しながら進める意識が欠かせません。


スタートアップ会議で決めるべき“4つの共有項目”

すべての成功は「初回ミーティング」で決まります。

このスタートアップ会議では、最低でも以下の4つを明確にしておく必要があります。

  1. 完成イメージの共有 ── デザインの方向性だけでなく、「どの程度の仕上がりを目指すのか」を数値や写真で共有する。
  2. 変更ルールの明文化 ── どの範囲まで現場判断で変更可能か、誰の承認が必要かを線引きする。
  3. スケジュール責任者の明確化 ── 台湾側が工程表を作り、日本側がそれをレビューする体制を決める。
  4. コミュニケーション手段 ── LINEかWhatsAppか、あるいはメールか。言語と記録の残し方を統一する。

この4項目を最初に合意しておくことで、後々の混乱をほぼ半減させることができます。

特に台湾では“口約束文化”が根強いため、議事録を写真で共有するなど、証跡を残す工夫が有効です。


設計図の翻訳とローカライズ ──「線」より「意図」を伝える

日台協業では、設計図の「翻訳」が最大の関門です。

図面自体は共通フォーマットでも、用語・寸法・表記ルール・施工解釈が異なるため、単なる言語翻訳では足りません。

ここで大切なのは、「線の意味」を伝えることです。

たとえば、日本の図面にある「意匠ライン」は、美しさのための線ですが、台湾の施工者には“施工基準線”と誤解されることがあります。

したがって、図面を渡すときには「この線は仕上げのリズムを示すもの」「この寸法は現場優先で調整可」など、設計意図を説明する補足資料(日本語+中文)を添えるのが理想です。

このひと手間が、現場での誤施工を防ぎ、職人との信頼構築にもつながります。

図面は“静的な情報”、意図の共有は“動的な信頼”。

両方をそろえて初めて現場は動きます。


監督同士の定期オンラインミーティングの重要性

台湾の現場は進行スピードが速く、現地判断も多い。だからこそ、週1回のオンライン会議が命綱になります。

ここでのポイントは、「報告」ではなく「確認」です。

  • 今週の進捗で変更があった箇所
  • 次週までに日本側が承認すべき項目
  • 図面修正が必要な部分

これらを短時間で共有し、議事録を即日翻訳して全員に配布します。

この習慣をつくると、日本側もリアルタイムで“現場の温度”を感じることができ、台湾側も「見られている」ではなく「一緒に進めている」と認識できます。

オンラインツールはZoomよりもLINEやGoogle Meetなど、スマホで確認しやすいものが好まれます。

写真・動画で進捗を報告する文化を定着させれば、現地訪問を減らしても品質を維持できます。


トラブル発生時の“最短解決ルート”を事前に設計する

どんなに優れたチームでもトラブルは起こります。

材料の不良、職人の病欠、発注ミス、法規変更など。

そのとき重要なのは「誰が、どの順序で、どんな判断を下すか」です。

台湾の現場では、トラブル対応が早い反面、「誰が決めたのか」が曖昧になりがちです。

これが後々の責任問題を引き起こします。

したがって、事前に“決定ルート”を図にして共有しておくことが有効です。

例:
現場トラブル → 台湾監督判断(軽微)/日本監督承認(中程度)/オーナー承認(重大)

このようにレベル分けをしておけば、無駄な報告の遅延が減り、現場判断の自由度も保てます。

現場のトラブル対応はスピードと透明性が命。

事前にルートを「設計」しておくことが真のリスクマネジメントです。


竣工後の「リカバリー期間」を契約段階で確保する

台湾では竣工後すぐにオープンするケースが多く、引き渡し後の“微調整期間”が軽視されがちです。

しかし、日本品質を目指すなら、最低でも1週間のリカバリー期間を契約書に明記すべきです。

この期間に、細部の補修・塗装ムラの再調整・電気配線の最終確認などを行うことで、空間の完成度が格段に上がります。

特に台湾では気候変化による素材の伸縮が大きいこともあり、初期不良は必ず発生します。

それを想定したスケジュールと予算を最初から確保しておくことが、結果的にクレーム防止にもつながります。

“リカバリーを前提にした竣工”こそ、海外プロジェクト成功の鉄則です。


第5章 “台湾設計×日本施工”が生み出す新しい価値

台湾設計×日本施工という協業モデルは単なる「役割分担」ではありません。

それは、二つの異なる価値観が融合して新しい空間表現を生み出す“共創”の形です。

日本の現場は精度と完成度を追求し、台湾の現場はスピードと柔軟性を重んじます。

一見相反するようでいて、実はこの両者が組み合わさることでアジア全体に通じる次世代の店舗デザインが生まれるのです。


日本の美意識 × 台湾の自由度がつくる“東アジア新空間”

日本のデザインが持つ最大の魅力は、「余白」と「整え」の美学です。

対して台湾のデザインには、色彩・素材・レイアウトにおける大胆な自由さがあります。

この二つが出会うと、秩序と遊び、計画と偶然が調和した“新しい東アジアの空間美”が生まれます。

たとえば、台湾設計会社が提案する自然素材を、日本の施工チームが精密に仕上げることで、現地の風土を感じながらも日本的な上質さを備えた店舗が完成します。

それは単なる輸入文化の模倣ではなく、「日本の整う美」と「台湾の生きる美」が共鳴した、これまでにない空間体験です。


コストとスピードの最適化:両国の強みをどう活かすか

日本の施工チームを台湾に派遣すると、「コストが高い」と誤解されがちです。

しかし実際には、設計段階から施工品質を意識した設計が行われれば、結果的にリカバリーコストを削減できるため、トータルコストは安定します。

また、台湾の職人や資材調達力を組み合わせれば、スピード感を保ちながらも一定の品質を維持できます。

重要なのは、「日本式を輸出する」のではなく、「台湾の環境に合わせて最適化する」発想です。

コスト・納期・品質という三角関係を両国の強みでバランスさせることができれば、アジア市場で戦える競争力を持つ店舗づくりが実現します。


台湾職人との協働が生む“学び”と“革新”

台湾の現場に立つと、日本の監督たちは驚きます。

彼らは図面が多少違っていても、自分の目で判断して動く。

道具の使い方や即興的な加工技術も実に柔軟です。

一方、日本の職人たちは、正確さと秩序を徹底的に追求します。

この両者が現場でぶつかり合うと、最初は戸惑いが生まれますが、やがて互いに学び合う関係に変わります。

台湾の職人は日本の「丁寧さ」を吸収し、日本の施工者は台湾の「柔軟な発想」に刺激を受ける。

その結果、これまでにない新しい施工技術や納まりのアイデアが現場で生まれます。

つまり、日台協業は単なる協働ではなく“相互研修の場”でもあるのです。


企業ブランドを高める「国際協業型店舗づくり」

海外での店舗づくりは、単なる事業拡大ではなく、企業の“ブランド価値”そのものを表現する行為です。

台湾設計×日本施工のモデルは、ブランドが「現地を理解し、尊重している」という姿勢を示す最も効果的な方法でもあります。

台湾デザイナーを起用することでローカルの感性に寄り添い、日本の施工チームが参加することで信頼と品質を担保する。

この組み合わせは、単なるコラボではなく“文化的なメッセージ”です。

たとえば、「私たちは台湾をただの進出先ではなく、共に空間を作るパートナーとして見ています」という姿勢は、台湾の顧客やメディアに強く響きます。

国際協業型の店舗は、ブランドの誠実さを可視化する最高のステージなのです。


日台協業がアジア進出のモデルケースになる未来

台湾での成功モデルは、やがて東南アジア全体に波及していくでしょう。

台湾は日本企業にとって地理的にも文化的にも「アジア展開の試金石」です。

台湾設計×日本施工という協業体制を成熟させれば、次の舞台となるであろうベトナム、タイ、マレーシアなどでも再現可能です。

さらに、台湾には中華圏・英語圏双方に通じるデザイナーや施工業者が多く、将来的には“アジアデザインハブ”としての役割を担うポテンシャルがあります。

日台協業が築いた信頼とノウハウは、アジア全体に広がる共創モデルの原型となるでしょう。

「日本品質をローカル文化と融合させる」ことこそ、これからの海外出店戦略の鍵です。


まとめ:「信頼がデザインを超えるとき、真の“共創”が始まる」

台湾設計×日本施工――

この組み合わせは、単なる国際協業の一形態ではなく「異文化の美学と技術が出会う実験場」です。

ここには、図面や契約書では測れない“呼吸の違い”があり、それをどう乗り越えるかがすべての鍵となります。

第1章で見たように、日本と台湾の設計・施工の呼吸は本質的に異なります。

日本は「図面で管理し、制度で守る」文化。台湾は「現場で判断し、人でつなぐ」文化。

この両者が歩み寄るためには、まず相手の価値観を理解し、「違うことを前提に設計する」柔軟さが必要です。

第2章では、実際の成功例と失敗例を通して、現場のリアルを学びました。

成功の鍵は、図面精度や契約条件ではなく、“共通言語”の形成。

つまり、設計者・監督・職人が「何をもって完成とするか」を共有できたとき、現場は初めて一つのチームになります。

第3章では、台湾で日本品質を実現するための具体的な工夫を紹介しました。

日本仕様を無理に押し通すのではなく、現地素材や職人の特性を活かしながら“目的に合った品質”を追求する。

日本側監督の役割は命令ではなくナビゲート。

そして、最も大切なのは「人間関係そのものが品質を決める」という真実でした。

第4章では、協業を成功に導くためのステップを整理しました。

スタートアップ会議で方向性を明確にし、設計意図を翻訳しながら共有する。

定期ミーティングでズレを修正し、トラブルルートを事前に設計する。

竣工後にはリカバリー期間を確保して、最後の“詰め”まで信頼を持って仕上げる。

それらのすべてが「誠実なプロセス設計」です。

そして第5章で描いたのは、この協業モデルが生み出す未来の価値。

日本の美意識と台湾の自由度が融合した“東アジア新空間”。

スピードと完成度のバランスを取りながら、コスト・納期・品質の三角形を再定義する試み。

そして、日台協業がアジア進出の新しいモデルケースになるという展望。

結論として、「台湾設計×日本施工」は十分に可能です。

ただし、それは技術的な意味で“できる”という話ではなく、信頼関係の上にしか成立しない“文化的な協業”だということです。

日本の常識を押し付けず、台湾の感性を尊重する。

そのうえで、品質・安全・納期という基本を揺るがせにしない。

このバランスこそが、現場を動かす真の“共創力”です。

台湾の職人たちは情熱的で、誠実です。

彼らは自分を信頼してくれる相手のために、驚くほどの力を発揮します。

日本側の監督やデザイナーが、その熱意を尊重しながら導いていくとき、空間は単なる商業施設ではなく、“日台の絆を形にした作品”になります。

これから台湾で店舗出店を検討する企業の皆さまへ。

ぜひ、「台湾設計×日本施工」という選択肢を前向きに検討してみてください。

そこには、コスト削減でも効率化でもない、“人と文化が織りなす真の価値創造”が待っています。

信頼は、図面を超える。

デザインは、言葉を超える。

そして、共創は、国境を超える。

あなたの次の店舗が、その新しい価値の象徴になることを願っています。

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